こんにちは、こんばんは、某人間より親しみを込めて。

今回は、映画オリエント急行殺人事件(2017)の感想です。


引用:シネマトゥデイ

公開:2017年12月8日
監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナー、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、デレク・ジャコビ、デイジー・リドリー 、セルゲイ・ポルーニン



あらすじ


世界的名探偵・エルキュール・ポワロ(ケネス・ブラナー)。

口元に特徴的な口ひげを蓄えた彼は"小さな灰色の脳細胞"を持つと評される変人探偵である。

エルサレムで起こった盗難事件の犯人をその持ち前の頭脳で暴いた彼は、ロンドンで起こった事件を解決する為に豪華寝台列車『オリエント急行』に乗車する。

そこで彼は、芸術品の贋物を売り捌くことを生業の1つとしている富豪・ラチェット(ジョニー・デップ)から脅迫文を送られていることを明かされ、護衛を依頼されるも彼の依頼を断る。

そしてある夜、オリエント急行は雪崩に遭遇し、脱線。
立ち往生してしまう。

更に翌日。
ラチェットが自室で12箇所をナイフで刺された刺殺体として発見。

ポワロは寝台会社の重役・ブーク(トム・ベイトマン)の依頼でラチェット殺害の犯人を探すことになるが、ポワロはこの状況から殺人犯はオリエント急行の乗客の中にいると判断。

医師、未亡人、宣教師、公爵夫人とメイド、教授、ラチェットの秘書と執事、セールスマン、車掌、伯爵、伯爵夫人、家庭教師。

偶然、1つの列車に乗り合わせた彼ら。

しかし、ポワロの捜査により次第に彼らの嘘が暴かれていき、驚愕の真相が明らかとなる。
そして、ポワロは"ある決断"を迫られる・・・。

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感想 ネタバレ有り


2250円

(某人間ブログの採点方法に関してはこちらの記事に参照)



2度楽しめる美味しい作品


公開日に早速、鑑賞してまいりました。
平日、朝の鑑賞にも関わらず、座席はほぼ満席
当作品への期待値の高さが伺えました。

本作は1934年に刊行された"ミステリーの女王"アガサ・クリスティの代表作『オリエント急行殺人事件』を原作とした作品となりますが、過去に幾度か映像化され、また、その型破りなトリックから本作品の結末を知らない人も少なくないのではないでしょうか。

日本でもつい最近、三谷幸喜脚本、野村萬斎主演で映像化されました。

では何故、オチを知っている人が多くいるこの作品を幾度にわたって映像化するのか。
また、何故、オチを知っている多くの人々も劇場へ足を運ぶのか。

答えは2つあると思います。

1つ目は色褪せない作品だから。

本作に触れたことが無い方もいると思うので、核心的なネタバレは避けさせていただきますが、前述した通り、本作のトリックは型破り過ぎて、他の作品に流用されることがなく、唯一無二のトリックとなっております。

私も原作を含め、何度か本作の映像に触れていますが、そのトリックが衝撃的過ぎて、何度見ても謎解きのシーンは鳥肌が立ちます。

しかし、本作の良さは、その半ば強引なトリックに頼り切らず、そのトリックすらもすんなりと納得させてくれる展開、そして、そこに至るまでの人間関係を繊細に構築している部分や他のポワロシリーズでは見られないポワロの苦悩・決断にあると言えるでしょう。

また、トリックだけでなく、雪崩で停車した豪華列車という舞台もこの作品だけの専売特許では無いでしょうか。

作中でも登場人物によって語られますが、列車とはよく考えれば異質な空間で、会った事の無い者同士がそこで出会い、まるで家族かのように昼夜を共に過ごし、そして、各々が目的地で下車すれば2度と出会うことはない。

この舞台はミステリーの舞台として打ってつけなのです。

まず、立ち往生した列車というのは違和感なく外界と遮断され易い空間です。
そして、豪華列車というシチュエーションが非日常感を演出し、また、適度に全乗客の行動が把握出来ない、しかし、全く接点がないという訳ではないという非常にミステリ向きな心地の良い舞台な訳です。

驚愕のトリックと本作にしかない舞台・空気感、そして、ミステリの女王が紡ぐ緻密な構成と人間関係。

これが1度鑑賞した人の心を掴んで離さない1つ目の理由です。

そして、2つ目。

それは、名優の共演を楽しむ為。

前述した通り、本作は非常に作品としての完成度が高く、最近のコミックや小説に類を見ない程の根強いファンを数え切れない数持っている為、安易に映像化出来ない"重厚な原作"です。

つまり、逆に言えば、本作が映像化される際、製作陣はかなり気合いを入れる訳です。
それは、脚本・演出もそうですが、何よりも演者のキャスティングでしょう。

確かな演技力と実績を持ち、かつ華もある。

そう言った役者が本作には必要になります。

そんな各々1人ずつでもしっかりと作品が作れる役者が出し惜しみせず、一同に会す。
つまり本作は、原作ファンだけでなく、映画ファンにとっての垂涎の一作な訳です。

本作のように物語を知らない人達だけでなく、既にオチまで知っている人もワクワクできる作品というのは、非常に稀有だと思います。

では、今回の映画はそんな原作に見合う作品だったのか。

次の項で本作の感想を述べていきたいと思います。

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アガサの原作を繊細に、時に大胆に再現


開幕早々、エルサレムで起こった盗難事件を"小さな灰色の脳細胞"を持つエルキュール・ポワロが爽快に解明します。

一方、朝食のシーンでは大きさが全く同じのゆで卵2個が揃うまで、何度もゆで卵を作り直させ、ゆで卵がテーブルに並ぶと定規まで持ち出すポワロの変人っぷりもしっかりと冒頭から焼きつけられます。

しかし、彼の中にある「善と悪の中間はない」「正義を全うする」という彼の信念も冒頭からしっかりと語られ、ポワロという一癖も二癖もある人物を短時間で上手くキャラ付け出来ていました。

また、この「善と悪の中間はない」「正義を全うする」という彼の信念が、原作を知っている人間にとっては非常にわかり易いフラグで、適切な表現ではないですが、内心、これからポワロを待ち受ける物語を想像すると「くすり」としてしまう信念でもあります。

そして、その事件が解決するとポワロはロンドンへ向かう為『オリエント急行』に乗車するのですが、ここからは名優たちを出し惜しむことなく、次々と登場させていきます。

スターウォーズのデイジーリドリーが登場したかと思えば、ジョニー・デップが登場し、それもつかの間ウィレム・デフォーが、ジュディ・デンチが、と怒涛の入場。

そして、そこからの構成は非常に緻密で、これだけ一気に人物が登場すると各々のキャラクターを掴むまでに時間がかかってしまうのですが、それぞれを上手くポアロと絡めることで、ナチュラルにキャラクターを観客に植え付けていきます。

ですが、そこで物語が停滞することなく、各キャラクターがそれぞれ怪しい言動を取り、まさしく全員容疑者とはこのことか!と言わんばかりの空気感を出していきます。

度々、申し訳ありませんが、オチを知っている私にとって、誰かがポワロと絡む度に、キャラクター同士が言葉を、目線を交わす度にニヤニヤしてしまうんですよね。

もしかすると、原作を知らない人より知っている人の方が何十倍も楽しめるかもしれません。

しかし、そんな朗らかな展開も悪天候の夜、雷により雪崩が起こり列車が停車すると雰囲気はガラリとミステリモード

ミステリはこの緩急がたまらんのですよ。
本作でもその緩急はしっかりと演出され、大満足。

そして、ここから名探偵の出番な訳ですが、ここであまり多くは語りません。

しかし、しっかりと物語は二転三転し、観客同様、ポワロも行き詰まってしまう程、状況は混沌としていきます。
他に類を見ない程に皆が強引なくらいに怪しく、そして、皆が嘘をつきます。

もう、これ、皆犯人だろ!と思ってしまう程に。

そして、迎える謎が解き明かされるシーン。

割とこのシーンはあっさりとしていました。
正味、10分程でしょうか。
なんせ、トリック自体は非常にシンプルですから。

ですが、そのたった1つのシンプルなトリックが明かされることにより、巧妙に仕掛けられた伏線は猛烈な勢いで回収されていき、心地良いミステリに浸れます。

勿論、原作の良さありきですが、演者の演技力、巧みな演出力がその良さを最大限に膨張させ、映像として我々に叩きつけてくれます。

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『オリエント急行』を支えた役者たち


さて、ではこの項では偉大な原作を支えた演者達をご紹介していきたいと思います。

しかし、恥ずかしながら、某人間が目にしたことのない役者も少なくなく、全員の紹介は非常に困難を極める為、私が気になった役者だけをピックアップしていきたいと思います。

①ケネス・ブラナー

本作で監督・主演を務めた彼。
以前、鑑賞し当ブログでもレビューを書いた『ダンケルク』にも出演しておりました。
その時私は、「ハリーポッターに出演した彼しか知らないので、彼の演技力・雰囲気に驚いた」というような評し方をさせていただいたと思うのですが(映画 ダンケルク 絶体絶命から始まる救出劇)本作で某人間の中の彼の演技力は確固たるものとなりました。

ポワロというキャラクターは非常に演じることが難しいキャラクターだと思います。

頭脳明晰だが、非常に曲者で、しかし、信念を持っている。

現代、ミステリにおける探偵役では割とありがちなキャラクターではありますが、ポワロはその元祖。
ポワロの表面をなぞっただけの演技力では、世界中に何万といるミステリファンを納得させることは難しいでしょう。

現にあの野村萬斎でさえ、あまり良い評価をされているとは言い難い状態でしたから・・・。

しかし、ケネス・ブラナーはそれをやってのけたと思います。

冒頭の卵のシーン、癖のある笑い方で変人っぷりを演技臭さなく演じ、その後エルサレムの謎解きシーンでは、流暢にコメディアンが舞台で話すように真相を解き明かし、オリエント急行では徹底的に悪を許さない、全てを見透かすような真っ直ぐだけを見つめる目力を披露しました。

そして、それらの毛色の違うキャラクターをポワロという人物に上手く収束させ、観客のポワロ像を裏切らないポワロを演じきったと思います。

②ジョニー・デップ

この人が出ると画にメリハリが出ますね。

個人的に彼は主役よりも脇役の方が作品に良い影響を及ぼす人物に感じます。

彼、殺されちゃうのでしっかりと作品に登場する時間は全体に対して少ないですが、鑑賞後も強く印象に残っています。

話は逸れますが、彼が出演する「ファンタスティック・ビースト」が待ち遠しいです。

③デイジー・リドリー

スターウォーズ新三部作の主人公を演じる彼女。

ジョン・ボイエガやオスカー・アイザックが次々と役者として活躍するのに対し、2人に比べ他作品への露出が少なく、勝手ながら少し心配していましたが、『オリエント急行殺人事件』という大作出演の座を射止めたので一旦、心を撫で下ろしました。

そして、本作では他の大物に見劣りすることなく、しっかりと重要なキャラクターとして物語に加担し、ジョニー・デップとまでは言いませんが、彼女が映る度に画は引き締まっていました。

また、某人間はスターウォーズでの化粧っ気のない彼女しか知らなかったので、しっかりとメイクアップした本作の彼女に容易く心を射止められました。

こんな精神状態で「最後のジェダイ」鑑賞出来るのか・・・心配事が1つ増えたかも知れません。
 
④ジュディ・デンチ

言わずとも知れた"M"とは彼女のことです。

007シリーズで長年M役を演じ、『スカイフォール』で同シリーズから華麗に身を引いた彼女ですが、本作でも大御所感が凄かったですね。

勿論、公爵夫人という役柄もあると思うのですが、それを差し引いても大物感が溢れ出していました。

そして、とても綺麗な瞳をされている女優さんだと感じました。

本作では彼女の表情が大きく映し出されるシーンが何度かありますが、くっきりと伸びた虹彩の筋がはっきり見える程の透明度の高い角膜の奥にあるグレーがかったブルーの瞳がとても印象的でした。

美しく、雰囲気もある女優さんなので、まだまだ現役で活躍している姿を見たいと感じました。

⑤セルゲイ・ポルーニン

伯爵を演じた彼。

某人間、彼を知らなかったのですが、端正な顔立ちで若いながらも他の役者に劣らないムードを醸し出し、ピンと張り切った琴線のような空気感を持っているなと感じました。

また、登場シーンでは狭いカフェで回し蹴りを披露するという暴挙(?)を披露し、かなり印象的で、鑑賞後ググって見たら、なんと

バレエダンサー

でした。

本作のトリック以上に全ての物事に納得いきましたね。

そら、見たことないわ。
そら、端正な顔立ちだわ。
そら、雰囲気出るわ。
そら、回し蹴り出来るわ。

さて、ここからは急ピッチにいきます。
 
ミシェル・ファイファー:年齢を感じさせない麗しさ。熟女好きにはたまらない(重要)
ペネロペ・クルス:いつも通りの感じ。
ウィレム・デフォー:人を顔で判断してはいけないの代表格。この人も画が引き締まる。
トム・ベイトマン:ナイスな相棒役。鼻に付くような登場の割に後半は非常に作品に馴染んでいた。
デレク・ジャコビ:急ピッチに評してはいけない俳優さん。溢れ出る好好爺感。

と、後半は雑な感じになってしまいましたが、予告編にある"名優たちが必要だった"という煽りに嘘はありませんでした。

また、ラストシーンでは「エジプト・ナイル川で殺人が起こった」とポワロに報せが入るのも原作ファンには嬉しい展開ですね。

興行的にコケることもなさそうですし、作品としてのクオリティも高いので、是非、他のポワロ作品も続編という形で映像化していただいたいものです。

以上。
最後までご覧いただきありがとうございました。

では。 

鑑賞前の予習に鑑賞後の余韻に文庫は如何ですか。
オリエント急行殺人事件 (角川文庫)
アガサ・クリスティ
KADOKAWA / 角川書店
2017-11-25


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