こんにちは、こんばんは、某人間より親しみを込めて。

今回は、映画傷物語 冷血編のレビューです。


引用:アニプレックス 

公開:2017年
総監督:新房昭之
監督:尾石達也
出演:神谷浩史、坂本真綾、堀江由衣、櫻井孝宏



あらすじ


私立直江津高校に通う高校生、阿良々木暦は、春休みのある日、3人の吸血鬼ハンターに四肢を奪われ、瀕死の重傷を負った吸血鬼"キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード"に出会う。

キスショットは暦を見るなり、血を吸わせるよう要求し、彼女を救う為、暦もそれに従うが、暦も吸血鬼となってしまう。

人間に戻りたい暦は、怪異の専門家、忍野メメに相談し、3人のハンターが所有するキスショットの四肢を取り戻し、彼女の力を元通り回復させる必要があることを知る。

そして、暦は吸血鬼の力を駆使し、それぞれ「仕事」「私情」「使命」吸血鬼を狩る3人からキスショットの四肢を取り返す。

その後、元の力を取り戻したキスショットは、約束通り、暦を人間に戻そうとするが、人間を食する彼女を目撃した暦は、自分が彼女を助けた事が大きな過ちだったのではないか、と自責の念に駆られ、自死すらも考える。

暦とキスショットの2人が、如何にして「傷物」同士になったのかが、明かされる・・・。

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感想 ネタバレなし


1600円

(某人間の採点方法はこちらの記事に参照)

本作は、西尾維新の同名小説をアニメ映画化した作品です。 

原作は、「物語シリーズ」と言われる大人気シリーズで、多くの作品がアニメ化されています。

アニメを鑑賞する機会の少ない某人間ですが、「物語シリーズ」の1作目に当たる「化物語」は鑑賞済みで、大好きな作品です。

簡単にご紹介しますと、このシリーズは、主人公、阿良々木暦の周りで起こる「怪異」と呼ばれる超常現象を怪異の専門家を名乗る忍野メメという男の助言を借りながら、解決していく、という作品です。

その中に西尾維新らしい言葉遊びや予想出来ない展開がふんだんに盛り込まれ、娯楽作品として、人気を博しています。

アニメの方も原作の雰囲気をしっかり引き継ぎ、文学チックで、かつ無機質なCGを多く使用した演出や印象的な構図が数多くのファンを魅了しています。

そして、本作は1作目「化物語」から仄めかされている「春休みの出来事」に焦点を当てた作品になります。

まずは気軽に「化物語」第1話からどうぞ。







ダイジェスト感


傷物語3部作の最終章に当たる冷血編。

某人間は原作を未読で本作を鑑賞したのですが、2作目、熱血編は説明不足に物語が急展開を見せることが多く、良い意味でスピード感を感じる反面、原作未読だった某人間には、ダイジェストのような印象を受ける場面も幾つかありました。

その原因としては、映画としては短い60分という尺に対し、3人の吸血鬼ハンターとの戦闘が描かれたことにあります。

しかし、冷血編に関しては、主となるエピソードが、キスショットとの決着のみなので、若干の駆け足感を感じつつも、前作で感じたダイジェスト感はあまり感じることはありませんでした。



実写にはできない戦闘シーン


本作では、キスショットと暦の吸血鬼同士のバトルが展開されますが、開戦早々に頭が飛ぶわ、腕は千切れるわのアニメだからこそ表現出来る常軌を逸した戦闘が繰り広げられます。

「傷物語」は、TV版のアニメとは違い、制作期間が長い為、作画が良いどころか、髪の毛一本一本まで滑らかに動きまくる素晴らしい作品で、前述した戦闘シーンもしっかりと動きます。

なので、アニメの割に迫力、躍動感のあるシーンとなっており、「所詮、アニメだろ?」と感じる方には、是非、鑑賞して頂きたい作品です。

アニメはアニメで、実写では出来ない演出があり、特にこの作品に関しては、そこを上手く演出に組み込んでいると感じます。

保存版にお薦めです。
傷物語 〈III冷血篇〉 [Blu-ray]
物語シリーズ
アニプレックス
2017-07-12



 

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感想 ネタバレ有り

明かされるキスショットの過去


本作ではキスショットに関する多くの過去が明かされます。

その中の一つで、本作の大きな鍵となるのが、暦の前にいた唯一の眷属に関する過去です。

その眷属は、400年前、暦と同じく日本で出会い、キスショットが日本語を話せる契機になった男なのですが、彼は自殺を遂げます。

寿命の長い吸血鬼の世界で、吸血鬼が自殺することは珍しくない話だそうですが、1人目の眷属である彼は、吸血鬼になってわずか数年で自死を遂げます。

キスショット自身、何故、彼がその選択をしたのかは、分かっていなかったようですが、その理由こそ「食人」です。

彼も暦と同じように人を食料としか思わない吸血鬼に仕えることに大きな葛藤があったのです。

そして、暦も責任を取る為に彼と同じ選択を選ぼうとします。

しかし、羽川翼の助言もあり、暦は自死ではなく、キスショットを倒すことで、責任を取るという選択肢を選びます。

某人間的には、1人目の眷属と暦の対比をとても興味深く感じました。

本作では1人目の眷属に関して、大きな掘り下げはありませんでしたが、恐らく、暦と違い、眷属として生きた彼には、暦にとっての羽川のような人間側の理解者がいなかったのでは、と推測されます。

前述したように本作では、展開において駆け足感を感じましたが、その割に羽川と暦のシーンは、しっかりと時間が割かれており、「これ必要か?」と思うようなやりとりも多くありました。

鑑賞中は、羽川とのシーンは、もう少し絞っても良いのでは、と思っておりましたが、暦が前の眷属と同じ末路を辿らない為の描写と考えると、内容と共に、そのシーンに時間を割くこと自体に意味があったのだな、と思います。 
 
※因みにキスショットとその眷属に関する過去は、同シリーズ「業物語」にて描かれているようです。



キスショットの思惑


2作目熱血編を鑑賞し終えた後、「キスショットが力を取り戻した今、3作目はどのような物語になるのか」考えてみました。

「キスショットが暦を人間に戻すことを渋るのかな?」

そんなありきたりな展開ではありませんでした。

キスショットは初めから、暦を元に戻す為、死ぬことを決意しており、また、本作では、生きることに退屈し、自死すら考えていたキスショットが、どうしてあの場で、暦に懇願したのかまで掘り下げられ、流石、西尾維新、と脱帽。

そして、自分が本作で最も感心したのが、忍野メメが2人にもたらした結末です。

ユダヤの考え方に「ミシュナ分配」という考え方があります。

この考え方を簡潔に説明すると、皆が同じだけ得るのではなく、皆が同じだけ我慢することで「公平」を与える考え方です。

「皆を幸せにしたい」とキスショットが死なずに且つ自らが人間に戻れる方法を望む暦に「そんなこと出来るわけない」と忍野は言いきります。

そして、代わりに忍野が提案したのは、「皆が不幸になる方法」でした。

その方法とは、キスショットから生命の保てるギリギリのラインまで吸血鬼の力を奪い、暦を人として生活できるギリギリまで吸血鬼の力を無くすこと。

若干、キスショットの方が辛いかな、とは感じますが、皆を均等に不幸にすることで、皆に平等の解決を与えるという点では、「ミシュナ分配」と言えると思います。

この「皆に均等の不幸を与える」と言う解決方法が、「物語シリーズ」らしく、また、「罪を抱える2人」の物語らしく、まさに「傷物語」と言うタイトルに繋がるラストだな、と思えました。

初め、忍野メメの下した解決策が非情な決断に見えましたが、沈んだ表情を浮かべるキスショットに暦がどのような表情を向けるか困惑しながらも笑顔を向けるシーンを見て、どちらか一人ではなく、2人が不幸を背負うことで、2人の絆は絶たれず、お互いがお互いを支え合う関係のまま日常(偶に、非日常)を営んでいくのだな、と感じ、暗さの中にも微かな光が見える救われる結末だと思いました。

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